第25話

「兄貴、どうだった?」



心配そうに聞いてくる蓮に笑みを返した。



「ふふ、”待ち合わせ”に食いついたよ。」



「・・・ゆいか、悪い顔になってるぞ。」



呆れた目を向けてくる蓮に笑みを深めた。


だって奏ったら。嬉しそうだったもん。



大学に進学したことで、私たちは別々の時間を過ごすことが増えた。



それは悪いことばかりに見えて、実は結構いいこともある。



その一つが待ち合わせ。



なんだかくすぐったい。待ち合わせって。



「おしゃれしなくちゃ。」


「・・・朝会ってんのにか?」



蓮の冷たい視線にも負けない。出かけるのはあまり好きじゃない私のテンションをこんなにも上げてくれてるんだから。



緩む頬を抑えきれないまま、衣裳部屋へと急いだ。



ーーーー、



「さて、どこに行こうか?」



いつもは着ない、黒のワンピースに身を包んだ私を振り返って、蓮は目を細めてそう言った。




大学内では基本パンツスタイルの私。


…だって講堂って足元が寒いんだもん。



朝会ったのに。奏に可愛く見られたくてお化粧にも力が入った。



少しだけ、なんとなく気恥ずかしい私に笑顔を向けた蓮は、適度な距離を保って隣を歩く。

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