第24話

携帯を手に取り、メール画面を開いた。


会議中のはずの奏。電話をすれば絶対に取っちゃうから。



隼人に会議中は取り上げてって常々言ってあるけど、それを実行できている感じはない。



ムリな相談だったなと隼人に申し訳なくなる。




[天気がいいので蓮たちと街に出ます。待ち合わせしよう?]



そう打って、携帯をテーブルの上に置くと、ソファーで談笑している2人に向き直った。



「着替えて…」


言いかけた私の口を止めたのは、心なしかいつもより激しく震えているように感じる先ほどまで手にしていた携帯。



画面を見れば、奏からの電話。



「もう。」



溜息を吐いて通話ボタンを押した私に、



「若に俺は止めたと言ってくれ。」



鬼気迫るお兄ちゃんの声が届く。



「奏、会議中でしょう?あんまり隼人を困らせちゃだめだよ?」



お兄ちゃんに苦笑いを返しながらそう言った私。



『白昼堂々浮気とはいい度胸だな。』



完全無視で返ってきたその言葉に、後で隼人に謝りのメールをしなくちゃと思った。



「待ち合わせしたいの。」


『・・・チッ、』



間を置いて吐き出された舌打ちに、内心ほくそ笑む。



「ね?”恋人”らしいでしょ?」


もう″夫婦″、なのにね?


『・・・時間と場所をメールしろ。』


「ん。」



私と奏は電話で長々と話さない。いつもこんなもの。


すぐに切られた携帯を見てニッコリ微笑んだ。

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