第19話

side ゆいか




「ばーかばーか!」



小学生以下の悪態を吐きながら未だに床で悶えている隼人を足で踏んでいる弘人は、



「てめえも笑っただろが。」


「うっ、さーせん!」



結局、素早く私の背後から飛び出した奏に蹴りを入れられてしまい、同じく床に伏した。


・・・弘人の場合土下座だけど。


ていうか、奏も笑ったよね?


心の狭い私はちゃんと覚えてるもん。いつか仕返ししてやろうと固く決意した。



「もう…笑われたのは傷ついたけどさ、やり過ぎだよ?」


隼人の額、大丈夫かな?



でもやっぱりこれは、女性の呪いだと思う。人って怖いんだから。



難しい顔をして見に行こうとした私は”壁”に阻まれて。


見上げれば不機嫌そうに見下ろす奏と目が合った。



それに苦笑が漏れる。


結局決まらないことになのか、隼人たちのせいなのか、奏の機嫌は良くなることはない。



私達の普通と、世間一般の普通。比べるまでもなく、同じものじゃない。



だから…



「私ね、やりたいことが、あるの。」


「あ?」



すぐさま反応を見せた奏に、にっこり微笑んだ。

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