第2話
ーーーー、
「ゆいか?」
「・・・ん、」
奏の甘い声が私の鼓膜を震わせ、私の意識は”逃避”していた眠りの世界から現実世界へ押し戻された。
「ぁ、おかえり、なさい。」
「珍しいな、お前が寝てるなんて。」
寝ぼけ眼で言った私に、奏は目を細めて私の頬に口づけた。
フワリと、香った香り。
奏の柑橘系のいつもの薫りは、私の意識を再び眠りの世界へと押し戻そうとする。
「お腹すいた?」
目を閉じたまま、離れた温もりを惜しみながらもそう言った。
「そうでもねえな。」
笑い混じりにそう言った奏の低い声と一緒に、衣擦れの音が聞こえるから、奏は着替える為に私の傍を離れたんだと、どこか遠くの自分が安心したのを感じた。
奏が組の仕事を終えたってことはきっと時間は2時くらい。
お夜食を用意するよりもう寝て体を休ませてほしい。
「風呂入るぞ。」
「ふふ、私もう入ったよ?」
「それはそれだ。」
どうしても一人でお風呂に入りたくないらしい奏が、素肌で私を抱き上げたのが感覚で分かった。
目を瞑っていても、奏の硬い身体の感触が伝わってきて。私の心臓が音をたてる。
目を瞑っていても、奏が一歩進む度に身体が浮く感覚に、自然と奏の首に腕を回す。
それに満足したのか、奏の喉がクツリと鳴った。
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