第57話

「そうだ、ここに、座ってごらん?」


「え?」



戸惑ういろはから離れて、ベッドであぐらをかいた。そして自分の太腿の上を指させば、いろははおずおずと僕の前に座る。



「違う違う。」


「っっ、郁?」



いろはの手を引いて、僕の上に跨がらせた。僕より少し上に目線のあるいろはを見上げて笑ったけど、笑い返すいろはの笑顔はまだぎこちない。



手も震えているし、顔色も青白い。



「っっ、」


それでも恥ずかしそうないろはの腰を撫でれば、身を捩って息を呑んだ。


そんないろはの腰をグッと引き寄せて、首筋にキスを落とす。



「っっ、いく、」


吐息を吐き出すようにいろはの口から漏れた自分の名前に、耳裏にゾワリと快感が駆け巡る。



「このまま。してみようか?」


「ぁ、ダメッ、」



いろはの制服のシャツのボタンを2つだけ空けてそう言えば、いろはは恥ずかしそうに前を手で隠す。



少しだけ赤くなった頬。悦郎が植え付けた恐怖なんて、忘れさせる。


それだけ僕といろはは、”学んできた”んだから。



お互いを感じていれば、2人でなら。



恐怖を前にしたって、大丈夫。そう学んできた。



「んんっ、」



いろはの太腿を撫でながら肩に歯を立てれば、いろはは簡単に僕の手の胸への進入を許した。

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