第54話
「柊羽は思春期か?いっちょ前に兄ちゃんが嫌いでな。偽善が過ぎて吐き気がするんだと。」
「それ、マジで嫌ってません?」
いろはの苦笑いに小さく頷いた。あの阿部柊羽とあの男。両極端すぎて一緒にいる所が全く想像できない。
ツッコんだいろはに吹き出した黒瀬は、煙を美味しそうに吸い込んだ。
「だが一応自分の兄貴だからな。悦郎の事は自分が決着をつける。そう言っていた。だからお前等も手を出すなよ?」
黒瀬の鋭い視線に、いろはの肩が震える。
いろはを怖がらせたことに憤りを感じて。黒瀬を睨み返した。
それに苦笑いを返してきた黒瀬は、煙草を再び窓の外へ投げ捨てる。
「……。」
それを、やっと戻ってきた母さんが目撃して。
「っっ、イテッ!」
ドスドスと僕たちの前を横切った母さんは黒瀬の頭にチョップをした。
「人払いしたいのなら、下にいますから!もうこんな事はしないでくださいね!」
鼻息荒く、そう言って部屋を出ていってしまった。
「ってぇ、お前の母ちゃん、中々やるな。」
「……。」
どうせわざと避けなかったんだろう。どうでもいいから何も答えなかった。
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