第51話

たわいない話に耳を傾け、時折期を見計らったタイミングで繰り出される謝罪にただ頷く。


暗くなる前に悦郎のお兄ちゃんは大人らしく、僕を家の前まで送って帰っていく。


悦郎の″代わりに″僕と遊んであげる彼は…


実に、満足そうだった。


被害者の僕に謝れば、悦郎の罪が浄化していく。本気でそう思い、あの男はいつも笑っていたんだと思う。


そんなの馬鹿みたいだよね?


許す訳がないのに。


だから僕は、帰って行くあいつの後をつけた。



こんな子供がつけているのに、あの男は一切気付く様子がない。


今聞いて思ったけど、焔の副をやってたくせによく気付かないよね。きっとあいつは、子供の僕を舐めきっていたんだ思う。



あいつが入っていったのは、アパート。それを出迎えたのは、僕と同じくらいの小さな男の子だった。




家が判明してしまえば、あとは簡単。



ただ、道行く人に事実を話して回っただけ。



こんなちっさいガキが言って回っただけで通行人たちが信じる訳もないんだけど、この時の僕にはその程度しかすることがない。



同じアパートの住人にも、わざわざインターフォンを鳴らして。


あの男の”弟”の話をした。



あのアパートにいる、弟とは違う弟の話を。

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