第50話

『あなたは、家族というだけで、犯罪者を庇うんですか?』


『っっ、』



至極、最もな質問をしたつもりだったが、黒瀬は目を見開き、あいつは固まった。



氷オニをしているかのように、全く動かなくなった大人たち。


馬鹿馬鹿しくなって僕は、公園を後にした。


なにか、呼び止められたような気がする。



だけど僕には、先ほどのあの男の言葉が全てだった。



この時初めて、僕のナカの悪魔が顔を出した。



悦郎の家族、それを壊してやろうと思った。


だから。


僕は毎日、いろはがいないこの公園に、通った。



それは、日課だからとかそういうんじゃない。いろはが居ないこの公園には、全く価値がないんだから。



それでも通ったのは……



『こんにちは、郁くん。』



悦郎のお兄ちゃんが毎日、”説得”に来るからだった。


あの日以来、黒瀬が来ることはなかった。その代わり僕は、週末、黒瀬の家で稽古を受けていたから。


黒瀬、いや、師範は、悦郎のお兄ちゃんのことは何も聞かない。



僕を舎弟、だの弟子だの呼んで週末、身を守ること、いろはを守ることを教えてくれていた。



僕は悦郎のお兄ちゃんをいつもにこやかに迎える。

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