第47話
side 黒瀬
「悦郎の兄貴は副をやっててな。」
初耳なのか、郁でさえ目を見開いている。
悦郎の兄貴は、”まとも”だった。それもそのはず、悦郎の兄貴はあのクソ野郎の外の愛人の子で、兄貴とはいえ、組の継承順位は皆無に等しい。
「こないだ、会ったヤクザがいただろう?」
「……祭で、ですか?」
小さく、頷いた。
「名前は黒瀬紀一郎(くろせきいちろう)この辺を占める朱雀会(すざくかい)の組長だ。あの男が、悦郎の父親だ。」
「くろ、せ?」
目を更に見開いた郁に、首を振った。
「俺はすげー遠い親戚だ。一応一族ってだけで、共通点は名字が一緒なくれえだ。」
俺の家は、本家の黒瀬に比べればちっせえもんで、親父も、お袋も、朱雀会には全く関係のない職業についている。
「俺は”たまたま”不良だったかんな。朱雀会がケツモチしてる焔の総長になった。”たまたま”な。」
「たまたまで総長にはなれないと思う。」
いろはは結構鋭いツッコミをすんな。
「まあそこは大目に見ろ。」
溜息を吐いた俺には偶然をわざわざ説明するほどの”労働力”はない。
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