第46話

『黒瀬?』


『……ああ。』




あ、分かった気がする。



『黒瀬は、強いの?』


『その辺のリーマンよりはな。』



”黒瀬”は……



『僕、強くなりたいよ。』


『じゃあ、教えてやる。』



悦郎の兄貴の、



『よろしく、黒瀬。』


『生意気だな。……師範と呼べよ小僧。』



【管理者】だ。




―――、



「師範って、悦郎の兄貴といましたよね。」


「え?」



紫煙をくゆらせながら、母さんの戸惑いの声にも反応せず、”黒瀬”は無表情でこちらを見ているだけだ。



「え、つろうって、お兄さんがいるの?」



”知らない”いろはは首を傾げる。



「そうだよ。”とても優しい”お兄さんがね?」



同意を求めるように師範を見れば、複雑そうに笑う。


そして諦めたようにため息を吐いた師範は、あろうことか吸い終わったタバコを窓の外へ投げた。



「あっ、なんてことを!」



慌てる母さんが窓の外を見た後、バタバタと音をたてて部屋を出ていく。



「師範……」



残念な奴を見る目で、僕の胸の中のいろはが師範を見ている。



「俺はあの時、焔の総長をしてた。」


「……え?」



いろはの視線をガン無視の師範は、ありえないことを事もなげに言い放つ。

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