第42話
そんないろはの目元に、そっとキスを落として。
「まだプロポーズしてないんだから。フライングだよ、母さん。」
「あら、だってこれは、決まっている未来でしょう?」
恋人同士が、いつか結婚をしようと言い合うことはよくあることかもしれない。
近しい幼馴染が、子供ながらに結婚する。そう言い合うことも。
だけどそれは、必然じゃない。
「これはね、ムードの問題なんだ。女性の母さんが軽視していいことじゃないと思う。」
「あら、女性にだって現実主義者はいるわ。」
だけど僕たちには、当たり前のことであり、【来るべき未来】つまり、【必然】なんだ。
「ったく、子供も子供なら、親も親だな。」
その声に視線を移せば、存在を忘れていた師範が、タバコを吸いながら僕の机の椅子に座っていた。
「覚悟を決めたんです。」
そんな師範にそれだけを言った母さんは、なにかすっきりとした表情をしていて、それを見た師範は鼻を鳴らした。
「覚悟はせずとも、悦郎はもう、お前たちの管轄じゃねえ。」
事もなげに言った師範は、窓の外に視線を移す。
その真剣な横顔はやっぱり、”見たことのある顔”だった。
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