第38話

それなのに……



「うあっ、痛いんだけどっ、」


「死ね。」


ボクを殴るこれは、確かにドール向きだけど……ちょっと趣味じゃないんだよね。



ボクのドールは、素晴らしいことに成長していた。


小さな子供だった妹は、柔らかそうで、甘そうな女になっていた。


成長をするドールなんて、素敵すぎるだろう?お父さんに自慢してやるんだ。



「っっ、いた、いって。」


「こいつ、こんだけ殴られてんのに。キモイ。」


なんだっけ。金髪のドールがなにか言ってる。



寝転んでいる地面を見つめて、金髪のドールを見上げた。



「見んな。」


「っっ、」


それだけで殴られたけど。


殴られた反動で動いた視界。そこには、艶々のローファーが見えた。



「っっ、やぁ、可愛いドール。お名前は?」


「うわ、話しかけられたんですけど~。」




ちょっと手直しが必要だけど、ドールに相応しい女の子が顔を顰めていた。



「おい、こいつに近付くな。あぶねえ。」


「こいつがいろはになんかしたんでしょ?興味あるし。」


金髪のドールと言い合いするこの子を、ピンクで彩りたい。


「ねぇ、ちょっとこっちへおいでよ?」


「っっ、」


ボクの誘い声に彼女が目を見開いた時、



「落ちろ。」


「っっ、」



一際大きな衝撃を受けて、ボクの視界は大っ嫌いな真っ暗闇に覆われた。

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