第33話

『そんな妹を見て、お姉ちゃんは悲しみの涙を流しました。』



だけど目の前が現実なのかも認識できない僕は、無意識に足を踏み出している。



突然止まったバスに生徒がざわつく中、バスを降りて。


肌寒い外で空を見上げる。



あの日とは違って快晴の空。なのにそれは急に、雨空に変わる。




―、僕を必死で抱きしめるいろはは、悦郎によってそこらじゅうに傷をつけられた。



中でもひときわ、深く刺さったのは脇腹の辺り。今でも残るその傷は、僕に最大の恐怖を与えてくれた。



泣きながら僕を抱きしめるいろは。そんな僕は、恐怖に慄きながら、いろはの小さな身体に包まれていることしかできなかった。



無力だったあの頃、僕を護ったのは、いろはだ。



雨で休みだった工事現場。だけどそこの責任者は出勤してきていて、僕たちを、いや、いろはを刻む悦郎を発見して、警察に通報した。



悦郎の”保護者”たちは、僕たちを探していたため間に合わず、悦郎は警察によって逮捕された。



だけど彼らの力なのか、悦郎は少年院へ送られ、2年だけ過ごした後、どこかの施設に入所した。



警察からの接近禁止令はだされたとはいえ、あいつが更生なんてしていないのは明らかだ。

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