第25話
『こんにちは、郁。今日は私のティーパーティーに来てくれてありがとう。』
『もちろんよいろは。今日はイチゴのスフレを持って来たのよ。いかが?』
手を繋ぐ私たちの前に、本物のティーセットをカチャカチャいわせて、悦郎は楽しそうに”おままごと”をする。
もうナイフは向けられてないけど、私と郁の身体は縛り付けられたように動いてはくれない。
ガタガタと震える身体。そんな私を支えるように、郁と繋いだ手は力強さを増す。
『……やっぱり、本物のドールは、いいなぁ。』
突然、そう呟いた悦郎は、うっとりとした目を私たちに向ける。
『ボクは女なんていらないんだ。』
そう続けた悦郎は、私と郁を交互に見る。それはまるで、どちらかを”選ぼう”としているように見えた。
その視線にゾッとした時、悦郎の目がゆっくりと、郁で止まる。
『っっ、』
息を呑んだ郁は、私の手を握る力を強め、身体を強張らせた。
視線を滑らせれば、さっきの怖い人たちはいない。
いつの間にか、悦郎のこの時間を邪魔しないようにしているかのように、姿を消していた。
ザ―――……
外で、雨足が強まる音が聞こえる。
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