第24話
うっとりとした表情の悦郎に言われるまま、私たちは同じドレスに着替えさせられた。
郁は蜂蜜みたいな色の髪、私は黒。毛先が緩く巻かれたそれを、私は悦郎にナイフを当てられた状態で被せられる。
私たちを着替えさせているのは、なんだか風貌の怖いおじさんたちで。
悦郎がナイフを出した瞬間、部屋に入ってきた。
壁際に座らせられた私たちは、どんどん着飾られていく。
可愛いメイクをされ、マニキュアも同じ、真っ赤な色を塗られる。
靴下もレースのもので、履かされた赤いエナメルの靴はぴったりだった。
ただ、怖くて仕方が無かった私がまだ、悲鳴を挙げなくて済んでいたのは、私と手を繋ぐ郁が、力強く握り返してくれていたから。
『可愛い~。』
”変身”が済んだ私たちを見て、ナイフを離した悦郎は両手を叩いて笑った。
無邪気なその表情にも私は、恐怖で答えることすらできない。
なんでこんなことしたの?という疑問も、私たちを帰して!という願いも、こんな人だったなんて!という怒りも。
なにも思い浮かばないほど、私たちを見て嬉しそうに笑う悦郎が怖くて仕方が無かった。
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