第23話

『ボクの綺麗なドール。姉は琥珀色の髪をしていて。』



『可愛い妹は真っ黒な髪をふわりと揺らす。』



『ボクのドールは姉妹。いつも座って、手を繋いでいるんだ。』



『綺麗だよ。”郁”と”いろは”ボクのドールは本当に綺麗だ。』




普通のマンション。その一室にはレースで彩られたファンシーな部屋があった。


クローゼットにはドレス、壁には大きな可愛い鏡、そして化粧台。



それは2つずつあって、それはドールの為に用意されているのだと分かる。



部屋に入った瞬間に見たのは、悦郎のドール。



引き裂かれたドレス。穴の開いた眼。頬はなにかで切り裂かれ、中の空洞が顔を出していた。



ボロボロになったそれを茫然と見ていた私たち。



気が付けば、私の首元に、鈍く光るナイフが当てられていた。



この時の恐怖ははっきりと覚えている。


震える私を目を見開いて見ている郁が真っ青になっているのを、首を動かせないまま、視線だけを向けるしかない。



『こんにちは、ボクのドールたち。』



私の耳元でそう囁いた悦郎は、私の耳元で嗤った。

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