第21話

『変かな?僕は僕のドールが大好きなんだ。だから僕はこの子を、1人の人間として扱う。この子は僕の、全てなんだ。』




そう言いきった悦郎の笑顔は、淀みが無くて。とても澄んだその表情は、私たちから警戒心を無くした。



『ねぇ、一緒にいてもいい?』



そう聞く悦郎に首を縦に振ったのは私。警戒しながらも郁もそれに同意した。



ーーー、




悦郎は、毎日公園に来て、私たちの隣に座っている。


にこにこと笑顔で、ドールを足の上に座らせて。


黒髪の綺麗なドールは時折、悦郎が鞄から出す櫛で髪をといて貰っていて、なんだか見ていると気持ちよさそうに見えるから不思議。


悦郎は私たちを見て笑顔でいるだけで、決して話に加わろうとはしなかった。


『こんにちは。』


『さようなら。』


ただ、挨拶をしてきて、挨拶をして別れる。



『えっちゃんこんにちわ。』


『また来たんだ?悦郎。』



私たちもやがて、悦郎が一緒にいることに違和感を持たなくなっていった。




そんな、ある日のこと。



その日は、しとしとと雨が降っていた。



いつもは傘を差して、ただベンチに座って過ごす私たち。


そんな私たちの前に、傘を差した悦郎は笑顔でやってきた。

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