第15話
「おい柊羽、それ、片づけとけよ。」
「はい。」
事もなげにそう言った”師範”は、頭を下げる柊羽に手を振っていろはと手を繋いで踵を返そうとする。
「だから誰だって!」
私のつっこみに全く答えようとしない”師範”は、いろはを無理矢理のように引っ張って歩いている。
そんな時だ。
「待った待った~。僕のドールをどこにやるの?黒瀬。」
柊羽の蹴りを食らったのに、全くダメージを受けていないかのような緩い声で、男はそう言った。
それに、背を向けたまま歩みを止めただけの”師範”、いや、黒瀬。
焔の、幻の先代だ。
「黒瀬、こいつが。」
そう呟いて振り返ったその男の顔を見た途端、
「っっ、」
恐怖で、全身に汗が吹き出した。
「てめえはマジで死んでろ。」
温度の低いその眼は、悦郎をまっすぐに見ていて、表情からはさっきのいろはを包み込むような優しさは皆無だった。
漂う雰囲気まで違っている黒瀬は、明らかに纏うものが一般人のそれとは違う。
焔の先代で、ヤクザもんを見るけれど、それ以上、いや、それすら遠く及ばない程の鋭利で重いものを纏っていた。
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