第12話

馬鹿め。乙女か。


そう失笑してしまいそうになる。



だからこそ私は、柊羽にハマった。


柊羽と抱き合ってれば、柊羽に翻弄されてれば、余計な事は考えないで済むから。



そんな時だった。



「黒瀬さん、お疲れ様です。」


電話の相手は、焔の先代。


めんどくさい、を理由にほとんど行事に顔を見せない、変わった人だ。


柊羽が電話しているのは見たことあるけど、どんな人かとかは全く分からなかった。



「悦郎(えつろう)が?」



低くなった声音。柊羽の険しい表情からしても、悦郎っつう男は何か嫌な存在のようだった。



「蓮池は?……ああ、そうか。」



郁?首を傾げてると、なぜか黒瀬さんに何かを言われた柊羽は恥ずかしそうに、罰が悪そうに顔を歪めた。



「分かりました。俺が行きます。」


そう言って電話を切った柊羽は、裸で横たわる私に真剣な目を向けた。



「長谷川いろはが危ない。行くぞ。」




ーーー、



それで訳の分からないまま、今に至るんだけど……



「保護者のとこに帰れよ悦郎。」


「嫌だね。あそこにはドールがない。ほど遠い”物”しかない。」



事もなげに言った、”悦郎”。



つか誰。

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