第11話

そういうの、虫酸が走るんだよね。大事なものはこの世に、一つだけしかない。


失ったら終わりだし、無くなったらそれは、この世界をつまらなくさせる。



私にはまだ、そういう唯一なものは見つかってないけど、柊羽がそうなればいいな、と思う。



それに横やりを入れたのが、伊吹という存在で。


普通に見れば、大っ嫌いな人種だった。



正義感に溢れてて、イイヤツで、人当たりも良くて。私のしてることを”ダメな事”だとちゃんと目を見て言える奴。


そのくせして優柔不断で。


下手に顔がいいもんだから周りを振り回す。



私のペースなんてお構いなしに、私が好きでやってることを全面的に否定する。



すっごい嫌。


嫌で仕方ない。なのに。


なぜだろう。アイツが気になって仕方ない。



いろはが私に会いに来てくれた時。思わず口走った。



『好き。』



こんな感情をあの男に抱いている自分が情けなく、腹が立つ。


認めてしまった感情は、私に葛藤させる。


柊羽も好きなのは変わりない。だけどアイツも気になる。


あいつと、松本にこの関係はなに?



あいつと、松本にこはあのあとどうなったんだろう。

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