第9話
side 柚希
とりあえず、言っている意味が分からなかったけど……
「うん。こいつがキモイってのは分かったわ。」
きちきちっとした格好なのに、喋り方は緩い。そしてこの言動。
男でドール遊びってどうなの?
男は、明らかに成人している出で立ち。そんな男が、自分のドールが魔法で生きている、なんて……
「気色悪い~。」
鳥肌が立ったから、柊羽からいろはを引っぺがして抱きしめた。
柔らかいいろはの感触。あー、久しぶり。
いつもは悪態をつきながらも私に抱きしめられているだけのいろは。だけど今は様子が違った。
「いろは?」
「ダメ。郁は。郁だけは。」
そう言いながらいろはは、私に強く抱きついている。
身体はガタガタと震え、汗がこめかみを伝っている。
ギュッと、強く抱きしめて。いろはにあの男の声すらも聞こえないようにしたい。
この男の存在を、忘れさせてやりたい。
いつも強く、まっすぐ前を向く、いろはだから。
柊羽に言われていたことが信じられなかった。だけど。
今現実に、いろはは、酷く怯えている。
視線を尖らせて男を見れば、男は楽しそうに私たちを見ていた。
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