第7話

男女の乗った、バイク。



それは長谷川と男の間で停まり、女の方がヒラリと降りる。


メットを取った女は、それを真下に落とすと、長谷川の手を引いた。



「いろは!」



力強い声音でそう言った井上柚希に、長谷川がハッと息を呑む。



「あ、しゅんくんじゃない?久しぶりだねぇ。」



そんな時に聞こえた緩んだその声は、この緊迫した空気には似つかわしくない。


視線を移せば、睨みを利かせる阿部柊羽と、それに笑顔を向けているさっきの男が向かい合っていた。



「てめぇ、サツから接見禁止が出てただろうが。」


「うん。そうだけどさ、僕が会いたいんだからしょうがないよねぇ?」



煙草に火を点けた阿部柊羽に笑顔のままの男は、同意を求めるように長谷川を見る。


その不気味な笑顔に怯えたのは私たちだけ。


長谷川はただ、闇色の眼をゆっくりと向けて。



「っっ!!」


「いろはっ、」



男に掴みかかろうと、両手を上げて飛びかかった。


それを咄嗟に、井上柚希が止めようとするけど、あまりの勢いに取り逃がす。



笑顔の男に長谷川が迫った時、


「おいおい、お転婆ってレベルじゃねえな。」


溜息混じりにそう言った阿部柊羽が、長谷川を後ろから羽交い絞めにする。

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