第6話

side 田中妹




「えっちゃん?」



そう言った長谷川。それに笑顔を返した男は、笑みを深めた。


第一印象は、がり勉。



整えられた短髪、均整のとれた身体を包むのは、ワイシャツにネクタイ、ベスト…そしてきちんとアイロンのかけられたスラックス、ピカピカの黒い革靴。


顔も恐ろしく整っているけど、イケメン独特の圧するような印象を受けないのは多分、その人懐っこい笑顔のせいだろう。



黒メガネをかけ、髪をかき上げる仕草は洗練された雰囲気を漂わせる。


その真面目そうな出で立ちを見れば、この男がこの学校の先生だと言われても納得してしまう。



だけど……




その男はなにか、不気味さを感じた。




一歩、長谷川が歩を進める。


それに目を向けた。


「っっ、」



長谷川の目に映るのは、憎悪。瞳孔は開き、口元は歪み、一歩、また一歩と確実に足を進めていく。



「長谷川?」



私が呼んでも反応しない長谷川の背中は。



「殺してやる。」


「っっ、」



そう”答えた”。



その時……



ブオンッ、ブオンッ!!



遠くでバイクの排気音が聞こえたかと思えば、それは突然現れたかのように大きく劈いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る