第58話

「お前は強いよ。そんなこと、なんてことないって笑ってられる奴だ。」



俺のその言葉に夏流は小さく微笑む。



そうだ、夏流は強い。だが・・・、



「だけど、お前は"弱い"」



俺の言葉に夏流は訝しげに首を傾げた。


そんな夏流が愛おしい。



俺が頬に手を滑らせれば、縋るように頬を委ねる。


俺が、瞼にキスを落とせば、嬉しそうに笑うんだ。



そして、



「お前、"俺限定"で弱いだろ?」


「・・・そうね。」



瞳を揺らす、か弱い俺の女。



夏流は強いが、恋愛が関係するとその辺の女よりか弱くなってしまう。



実際ツインテールの"嘘"を見抜いておきながらも、こいつは壊れた。



「お前が弱いのはいい。だけどな?」



夏流の両頬を両手で包めば、シーツは体を滑り落ちていく。



裸で向き合う俺たちは、膝立ちになって顔を寄せた。



「不安になったら、"俺"に頼らなくてどうする?自分の中に溜め込んだ結果がこれだ。」


「ッッ、……そうね。」



震える吐息を吐き出した夏流に、俺の口角が上がる。



「まぁ、そこは今から"お仕置き"するとして……、」



俺の"お仕置き"発言に目を輝かせた夏流に内心苦笑しながらも、先を続けた。




「今後俺に頼らねえで他の男に隙を見せるようなことがあれば・・・」



笑みを含んだ言葉を吐き出しながら、俺の指先は夏流の肩の"印"を這う。



身を捩った夏流に微笑んだ。



「今度こそ殺してやる。」



俺の言葉に嬉しそうに頷いた夏流に苦笑を漏らすと、反転した視界。



俺を見下げる、女神は、薄く笑うとお返しとばかりに俺の肩に歯をたてた。



「ッツ、」



痛みに歪む俺に、その赤く染まった口で弧を描くと、彼女の指先は再び俺の身体でリズムを刻んだ。




・・・たまにはラブホもいいな。





side end

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