第59話

side 弓



「・・・で?秋はなにがしたいわけ?」


「チッ、」



仕事から帰るとエントランスで待ち伏せしていたのは、不機嫌に顔を歪ませた秋。



後ろの壮士がそれはそれは面白そうに微笑んでるけど、そこは疲れそうだからスルー。



どうやら私に怒っている様子。



「自分の胸に手を当てて聞いてみろっ。」



そう吐き捨てた秋は、理由を教えてはくれないらしい。



若干、ほんとに、ちょっとだけ、イラッときたけど、私が知らずに秋ちゃんを傷つけてたかもしれない。



そんな内側の天使弓に言われ、一応、胸に手を当ててみる。




(えー、今日は遅刻しそうになって……、慌てて出てきたからなぁ。)




はっきり言って、゛今日゛の秋に関する記憶は皆無だった。



「壮士くんや。」


「ふっ…、なんでしょうか?」



私の呼びかけに何故か鼻を鳴らしながら答える壮士の様子から、秋の怒りの理由がかなりしょうもないことだと推測出来た。



だけどここでしょうもないなんて言ったらマジで抱き潰される。



夜の自分の安息の為、壮士に笑顔を向けた。



「ヒントちょうだいヒント。」


「・・・・出来かねます。」



完全に面白がっている壮士は明後日の方向を向いてしまい、私は口端を引くつかせる事しかできない。



かなりめんどくさくなったから、家に帰ろうと

固く決意。



「・・・・・どこに行く?」




エレベーターへ向かいながら愛想笑いを浮かべる私は、その一言で停止を余儀なくされた。

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