第54話

夏流とほぼ1日会えないのは、高1の時に経験したが、あの時と違うのは俺の心理状態だ。



ツインテールのストーカーに、康祐の存在。



日に日に焦りは募るも、マニュアル通りに進められていく息苦しい教習を受ける日々は、俺に冷静さを無くさせる。



そんな時だ。




夏流が学校を出た。




彼女のクロスに付いたGPS、動けば俺に連絡が入る様に頼んであった。



「お嬢が学校の範囲を出た。密人からの連絡で安城月と一緒で、"息抜き"だそうだ。」



「・・・・ありがとうございます。」



本家の護衛からの連絡を受け、直ぐに夏流に電話をかけた。



しかし、一向に繋がらない。



挙句には切られる始末。



「ッッ、」





限界まで溜まっていた水は、少しのきっかけで決壊する。





この時、俺は確かにコワレテイタ。




その後、学科が1時間だけあった。



「朔真くん!隣座ってもい〜い?」



いつもの様にツインテールが俺の隣に座ろうとする。



「・・・・・、」



薄く笑う俺は、いつもは排除するが、こいつの存在なんて写っていなかった。



「朔真くん?」



勝手に隣に座ったこいつが首を傾げるも、目の前をただ見つめる俺は黙々と授業を受ける。





だって紅く染まる俺の思考は、夏流の首を、締めていたから。





綺麗だった。




苦しさに喘ぐその目も、殺されるというのに俺にひたすら向けるその好意も。


事実、夏流を俺が殺す時には、彼女の綺麗な瞳は歓喜に歪むだろう。



愛する女に、会いに行こう。



他の男に触れたのならば、殺してやるよ。



「ククッ……」



授業中、微かに響いた俺の笑い声。


隣の木下だけが気付き、体を震わせていたのを、俺は知らない。

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