第53話

ーーーーー2週間前、




「・・・・お前、頭オカシイんじゃねえの?」


「免許取ったらさぁ、一緒にドライブ行かない?

私パパに車買ってもらったの!」



目の前で満面の笑みを浮かべるのは、ツインテール木下。


マジで鳥肌立ったんだけど。


こいつゾンビかなんかじゃねえの?


つうか未だに父親をパパ呼ばわりかよ、キモ。



こいつの容姿でパパと聞くと違うパパを想像してしまうのは俺だけだろうか。



そんな俺の思考を遮るのは、木下の高い声。



「私ぃ、学科とか、朔真くんと一緒になれるやつは一緒にしたいの。予約取るから時間割、教えてくれる?」



「は?ふざけんなよ。きもい。」



満面の笑みでラメで彩られた手帳を手にする木下が本気で気持ちが悪くなった。


何故かキョトン顔の木下を置いて次の教習を受けに行った。




ーーーーー、



それから毎日、木下は俺が教習所に行く度ロビーで待ち伏せしていた。



流石に公共の場で殴るわけにもいかずイライラは募るも、無視を決め込む俺。



それでもゾンビの様に付き纏うこいつは、マジで精神鑑定を受けた方がいいと思う。




それと同時に、教習から帰ると日に日に下がる、夏流の周りの気温。



木下が教習所に現れたのは初日に言っておいた。



夏流の返答は、


「・・・・そう。」


それだけ。



不思議に思ったが、もうあの女は夏流の眼中にないのだろう、とこの時そう決めつけた自分も、やはりおかしくなっていたのかもしれない。



俺だって、夏流が"足りない"んだ。

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