第51話

side 夏流




「ハ……、ぁ、」


「……くっ、」



酷い内装、硬いベッド、下品な販売機。



それでも今、私を激しく抱くのは"最高の男"



ベッドの軋む音が響き、同調する水音は私と彼の深い"繋がり"を物語っている。



「っつ……、」



そしてもう1つ、彼から与えられる"戒め"


それが私の全身を歓喜で染める。



嫉妬に狂った獅子は、その獰猛な金色の瞳を怒りに染め上げ、私を激しく貫いた。



痛み、快楽、そして愛おしさ。


止めどなく与えられるそれらに、私は体を弓なりにしならせて答える。



「っ……夏っ、」



そしてまた1つ、彼は私の中へと欲望を放った。



汗ばむお互いの体を隙間無くすり寄せ、彼は私の中に入ったまま、至近距離で見つめる。



見下げられた私が彼から感じるのは、"憤怒"



しかし息を吐き出した彼は私の額に諦めた様にキスを落とすとそっと自身を引き抜いた。


その刹那、感じたのは、"寂しさ"



いつもは抱きしめていてくれるのに、彼は私に背を向けたまま浴室へと姿を消していく。



その途端私の中で、寂しさは闇へと姿を変える。




「ぃ……ゃ、……いやあああああ!!」




朔真が去ってしまった。


二度とっ、私に背を向けないで欲しいと言ったのに!!



体に残る彼の爪痕も、執着の華も……肩の、痛みも、


気休めにすらならない。



「ぁぁぁぁ……、」



頭を抱えて、残像を振り払う。



『教えてあげるっ、私、朔真くんと一緒に教習所行ってるんだよ?』



女子トイレで彼女はいつも、一言"教えてくれる"



『今日は同じ授業でね?隣同士だったんだ!』



ツインテールの彼女は、私に囁くの。



『受かったら一緒に、ドライブ行く約束したんだ。』



彼女が吐く"嘘"は、私を追い詰める。



『やっぱりアンタ"重い"んだって!別れるから付き合おうって言われたんだぁ♪』



コワレタノハ・・・ワタシ。

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