第48話
"何考えてる?"
"返事返せよ。"
"ふざけんな。"
"夏。"
画面からは、朔真の怒りがヒシヒシと伝わっていて・・・
「お前、大丈夫か?」
こんなに怒らせて。
そう続けた俺に、夏流は小さく笑みを漏らした。
画面を見つめて艶を見せた瞳は、タップする度に歓喜に染まる。
見えた画面端から推測するに、GPSを起動させているようだった。
しばらく画面を見つめていた夏流が目を細める。
「近いわ。昭子ちゃん、お会計。この人のコーヒー分もね?」
少し声を強く出した夏流に、俺は慌てて口を開いた。
「いや、ここは俺が奢る。連れ出したのは俺だ。」
そう言う俺に夏流は首を横に振る。
それでも俺が奢ると言おうとした時、昭子が意地の悪い笑みを携えながら厨房から出てきた。
「なっちゃんご愁傷様。朔坊バイクで来るよ。」
「そうなの?……かなり余裕無いわね?」
化け物と美女の会話を前にして、さっきから近付いてきているバイク音は朔真だったのかと合点がいった。
「なんでバイクだと余裕無いんだよ?」
俺の訝しげな問いかけに、夏流は困ったように眉を下げる。
「バイクは危ないからって、普段私と一緒の時は乗らないのよ。それだけ今の彼には余裕が無いの。だから・・・、」
コーヒー代は、慰謝料ってことで。
そう呟いた夏流の声が俺の耳に届くと同時に、
店の前に轟いたバイクの排気音。
ガシャンッッ!!
店の扉が激しく開き、姿を見せたのは怒りを纏った金色の目。
俺の肌がゾワリと殺気を感じ取った瞬間、喉元に朔真の蹴りが飛んできていた。
「グッ!」
咄嗟に手を割り入れて衝撃を和らげはしたものの、この間とは比べ物にならない程の蹴りの強さ、そして格段に上がっているスピードについてはいけず、俺の体は椅子ごと背後にはじき飛ばされた。
ガツンと背後に衝撃を受け、余りの痛さに息を呑む。
生理的に浮かんだ涙越しに見た朔真の瞳は、殺気に彩られていた。
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