第46話

「お前は理由知ってんのか?」


「・・・・そうね。」


コーヒーを口に含んだ夏流は、そっと目を伏せた。



その行為は、話すつもりはないと語っている様で。


新城さんを手に入れ、蓮さんをも傍に置く。


それだけで、バカ女たちのゆいかさんへの嫉妬の目は必然で。


それでもあの人たちは幸せそうに笑いあっていた。



「仲、いいよな。」


「そうね。私の憧れ。だけどね、母さんも、お父さんも、辛い事を乗り切ったから今があるの。」



父さんは分からないけど。なんて結構酷い事を言う夏流は、困ったように眉を下げた。



「なんか、不思議だよな。あの人たちの関係って。」


「そう?生まれた時からああだから分からないわ。弘くんは昔からウザかったけれど。」


「フハッ、なんか弘人さんって、いつも可哀想だよな。」



弘人さんの"可哀想な話"に花を咲かせていると、夏流は先ほどから短い振動をし続けていたスマホへと視線を移した。



「タイムリミットかしら。」


そう呟いた夏流は、嬉しそうに顔を綻ばせる。


「飛んでくると思ったんだけどな。」



俺と夏流がここに来てもう1時間以上は経つ。


完全間男な俺は、飛んできた朔真からの一発は覚悟してたのに。



喫茶店の扉は一向に開く気配は無かった。

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