第45話

昭子によって置かれた色鮮やかなパフェに、夏流の瞳は一瞬にして輝く。



そんな光景を見ながら、俺は内心確信していた。



「俺、やっぱお前好きだな。」


頬杖をついて、無くなっていくパフェを眺める。


静かに、淡々と口に運んでいるのに、無くなるスピードが早すぎやしないか?


苦笑していると、今まで忙しなく動いていたスプーンが止まっている事に気付く。


視線を上げると、夏流が困ったように笑っていた。


「ありがとう?」


「ククッ、なら俺の女になれよ。」


「無理ね。」


夏流の即答に苦笑が漏れるも、俺は頬杖をついたまま、彼女へと真剣な目を向けた。



「お前程の女を、忘れるのは難しい。」


そう呟いた俺に、夏流の瞳が揺れる。



「一生、手に入らない人間を思い続ける人間の・・・激痛を知らないでしょう?」



夏流の吐き出した言葉は弱々しくて、その瞳は切なさを語っていた。



「そりゃ、辛いかもしんねえが・・・」


俺の言葉に夏流は少しだけアイスクリームを口に含む。


「私とその人は年が離れすぎてるから、若い頃の苦痛は知らないけど、今でも時折、寂しそうな、辛そうな表情をすることがあるの。」


夏流の語る、その人って……、


俺の視線の意味を感じ取ったのか、夏流は小さく頷いた。


「ん、"お父さん"。」


「やっ、ぱり、か。」



蓮さんがゆいかさんに気持ちを捧げているのは、有名な話だった。


学生時代、蓮さんの女だったゆいかさんが新城さんの女になった。


それについては様々な憶測が飛び交ったが、真実は最早、どれなのかは分からない。

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