第43話
スマホはカウンター上で振るえ続け、夏流はただ、それを見つめる。
「取らねえの?」
画面上の【朔真】の表示を見ながら問いかけるも、夏流は小さく息を吐き出すだけだった。
「私って、メンドクサいじゃない?」
そう呟いた夏流は、もう一口、コーヒーを口に含む。
「そうだな。」
俺の肯定に表情を変えない夏流は、スマホの画面をタップする。
それは、朔真から彼女への通話の遮断を意味していた。
「朔真が教習所に行くのはしょうがない事なのよ。
私の護衛でもあるんだから、車の運転出来ないと意味ないし・・・。
ほら、佐竹がおじいじゃない?いつ引退するか分からないものね。」
「・・・お前、地味にヒドいな。」
俺の苦笑に夏流は小さく笑う。
佐竹さんは、確か姐さんの1個上だ。
引退なんて考える年じゃない。
「教習所に行くのでも時間を裂かれるのに・・・組の仕事も最近手伝ってるのよ。」
「・・・あいつ、いつ寝てんの?」
下っ端だが、俺でも正直いっぱいいっぱいだった。
思ったより新城組は仕事がハンパなく多くて。
これを難なくこなして自分の女に時間を裂けるなんて、やっぱりあの人たちは化け物だ。
苦笑いを浮かべる俺に、夏流は小さく首を傾げた。
「いつも寝てるわよ。私の隣で。」
「はぁ……あのなぁ、俺一応、お前に惚れてんだけど?」
なんで惚れた女の夜の事情を本人から聞かされなけりゃいけねえんだ。
口を尖らせた俺に、夏流はクスクスと笑い出す。
「貴方じゃ、私を愛し抜けないわ。」
確信を持って吐かれた言葉にムッとした。
「は?俺の気持ちはそんな軽いものじゃねえ。」
唸るようにそう吐き捨てた俺に、夏流は強い目を向けた。
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