第41話

「それで?お前やっと俺とデートする気になったのか?」



俺は隣の夏流に向かって口角を上げる。



こいつが俺に付いて行かないための抵抗が出来る女だということは分かっている。



流石に負けはしねえけど。



しかし大人しく着いてきた。



それは何を意味するのか。


最近ずっと笑みを崩さない夏流は、ここでも笑みを浮かべたままで。



逆にそれが俺の中で不安を生み出す。



"こいつ、大丈夫か"と。



そんな俺の心配を余所に、夏流は更に笑みを深める。



「たまにはいいじゃない?"浮気"も。」


「・・・。」



どうやら夏流にとってこれは浮気にあたるらしい。



「私、ね……。」



すんげー空気を読める昭子が静かにコーヒーを置いてフェードアウトした後、一口飲んだ夏流はそう切り出した。



「馬鹿なのよ。」


「??」


首を捻る俺に夏流は小さく笑う。



「試して、試して……それに答える朔真が正解を出さないと、暴れちゃうの。」



小さく、頷いた。



こいつの"愛"とやらは、重い。



俺もそう感じた。



朔真はそれを嬉しそうに背負ってるから気にしなかったが……



「これも、そうよ。」



目を細めた夏流は強く彼方を見つめて2口目のコーヒーを飲んだ。



「貴方は、どうしたら私を諦める?」



いきなりの話の方向転換に、軽く面食らう。



それでも俺の頭は質問の答えを探していて…、


考えるためか、俺も初めての一口を口に含んだ。

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