第39話

「聞きてえか?」



超しょうもねえぞ、なんて続ける密人に苦笑いで頷くと、マジでしょうもねえ話が返ってきた。



来月、驚いたことにこのバカっプルは同じ誕生日を迎える。


それに合わせて朔真は車の免許を取らなきゃいけねえらしく、一緒にいれる時間が少なくなるのに夏流がイラついている、と。



「・・・マジしょうもねえな。」


「だろ?」


最近こいつらの馬鹿さを一緒に理解してくれるやつがいて嬉しい、なんていう密人は、冷たい視線を奴らに送る。



「けど、夏流がキレたのはそこじゃねえんだと。」


「あ?」


鼻を鳴らした密人が言うには、それならば一緒に教習所に通うと言い出した夏流を、朔真が却下した、と。



「・・・、取るくらいならいいんじゃね?」


俺の意見は最もだと思う。


新城の姫の夏流が自分で運転することはないとは思うが、免許持ってれば何かと便利だ。


今や身分証明の為だけに更新し続けてるペーパーなんていくらでもいるしな。



路上とか試験とかの危険は新城で警戒してやれば済む話だ。


そんな俺に密人は眉間に皺を寄せる。



「男が寄ってくるからダメなんだと。

それに路上での危険も100%有り得ねえって保証はねえしな。」


「まぁ、そりゃそうだな。」


半分は嫉妬、半分は心配なんて、朔真の器の小ささが披露されたらしい。



「それにこれは姐さんが許可しなかったんだと。

確かに路上で車に突っ込まれでもしたら防ぎ様がないって。」


「過保護っちゃ過保護だが、姐さんの話にも一理あんな。」



俺の言葉に小さく頷いた密人は、眉間の皺を濃くした。


「・・・やべえな。」


呟いた言葉は若干の焦りを見せていて、俺は訝しげに首を捻る。



「なにがやべえんだよ?」


再びバカっプルへと視線を移せば、笑みを浮かべた夏流が朔真へ毒を吐いているところだった。

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