第37話

あれから、2ヶ月ちょっと。



康祐は疲労に喘ぎながらも、新城の仕事もこなし、夏流に会うために毎日学校へ通っていた。



夏流はというと……、


「・・・・。」



笑みを張り付けて椅子に座ってはいるが、目には一切の愉悦は無い。



近寄り難い雰囲気に、流石の俺でも近付けず。



理由は簡単。



朔真が居ないからだ。



朔真と夏流、実はこの2人、誕生日が同じで。



7月10日生まれ。


この日を狙って朔真は今、教習所に通っていた。



最短で取ろうと教習所に通う朔真は、キャンセル待ちの為1日居ない事もザラ。



「俺が居ない間、頼むな。」



そう言われはしたが・・・、



「夏流、俺今日非番なんだ。デートすっか?」


「・・・・・殺されたいの、かしら?」



機嫌が悪いなんてもんじゃない俺の幼なじみは、康祐を今にも殺してしまいそうだった。



「気分転換に、ケーキでも食いに行くか?」



俺の提案に、夏流は弱々しく首を振る。


「行かないわ。今日は家にいる。」



そう呟いた夏流に苦笑いをこぼす。



また本家の道場に行って組員を投げ飛ばすつもりなんだろう。



彼らの平和の為、少し強気に出てみる事にした。



「まぁまぁ、康祐も最近頑張ってるらしいし、褒美くらいやれよ。」


「一緒にケーキ食べる事のどこが褒美なのよ?」



イラついた声を出す夏流に、康祐は苦笑いを浮かべた。



「まぁ、友人として、な。元気の無いお前とケーキを食いてえ。行くぞ。」


「え、ちょっと!」



夏流の腕を強引に引く康祐は、口角を上げて教室から出て行ってしまった。



メール画面を開いて今日の護衛に宛てる。



気分転換だ。遠巻きに見ていてやって欲しいと。



最近、康祐と俺たちは一緒にいる様になった。



夏流を諦めないにしろ、友人として一緒にいるようになった康祐には、夏流も朔真も気を許している感がある。



たまには、朔真以外の男と出歩いてみるのもいい。


あいつが夏流をほってるのがいけねえんだ。



「どうせ、すぐに駆けつけるさ。」


わりいな康祐。



最近できた友人を気の毒に思う。



「当て馬にはもってこいだな。」



小さく笑みを漏らして教室を後にした。

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