第34話
side 密人
漸く"仲直り"した夏流と朔真は、離れる隙間も惜しいかの様に寄り添い歩く。
そんな2人を苦笑しながらも、悲しみを瞳に宿す康祐と共にバカップルの2人の背を見ながら歩く俺は、気が付いた様に口を開いた。
「そういやお前、白虎入らねえか?」
目を伏せて小さくため息をついた康祐はゆっくりと視線を合わせてくる。
「・・・無理だな。んな暇ねえ。」
「ククッ、確かに。」
そういえばこいつは今日から若の所で働くんだった。
「俺は卒業後だが…、あそこの過酷さは知ってる。」
俺のつい呟いた言葉に康祐が小さく息を呑む。
「やっぱりか・・・。」
今度こそ深くため息をついた康祐が小さく笑うから、俺もつられて笑ってしまう。
新城は、忙しい。
俺は白虎総長、バーの経営、若の補佐と3つの顔を持っているが、一番"クル"のは、若の補佐だ。
そう言ったところで、到着した購買。
「弓、誤解すんな。俺はあくまで"ヒヨコ"を迎えに来たんだ。」
「はぁ?じゃー私はどうでもいいわけね。
じゃー私は夏流とケーキでも」
「は?無理。ダメ。俺がなんの為に迎えに…あ"。」
「若・・・墓穴もいい所ですね。」
「「・・・・。」」
相変わらず、この人たちは・・・。
雅人さんが柊の組長になってしまい、この3人を纏める人間がいなくなってしまった。
今は俺が来るまでの変わりを務める為、岩井さんが本家から出向してきてくれているが、
姐さんの長年のお付きで慣れているのか、端の方で笑みを浮かべているだけだった。
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