第31話

side 康祐




「これは・・・いつもか?」


「・・・まぁ。」



目の前で熱く抱擁を交わすのは、俺の惚れた女と従者のライオン。



俺の隣で冷めた目を2人に向けるのは、白虎総長の密人だ。



安城月組の1人息子に生まれて、それなりの教育を施されてきた。



なのに、俺には"覚悟"が足りねえ。



今の俺に、命を賭してまで組長の座を継げるのか?


答えは、否だ。



この世界でてっぺんを目指すのに、意義があるのか・・・、


そんな疑問を持ったまま、同盟以上、それも位の高い組のみが参加出来る山王会議(さんのうかいぎ)に、親父に連れられ参加した。



新城本家で行われるその会議は会場の空気が張り詰めていて、俺の身をすくませた。



トンっ……、



静かに開けられた襖。


姿を現した男は、俺に息をさせることさえ禁じる。


それだけ、この男から発する空気は、重い。



新城奏



その男は静まり返った部屋の中央をまっすぐ前を見て進む。



その背後、右には新城秋。


新城家の長男は次期組長で、父親と変わらない程の威圧感を持っていた。



左側には、新城奏の右腕、田島隼人が笑みを浮かべて付き従う。



俺の中で巣食っていた、曖昧な部分。



『てっぺんとは、こういうものだ。』



身体が、震えた。



この人達を、"見てみたい"と。

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