第27話

「でも、それって結局は兄さんが弓を迎えに行く口実よね?」



夏流の鋭い指摘に、弓が目を見開く。



「そうじゃん!いくら同盟の息子だからって秋が迎えに来るわけないもんね。もー……」



仕方のない奴、なんて言いながらも顔が嬉しそうに見えるのは俺だけだろうか?



周りを見渡せば・・・、

みんな呆れている所を見れば、俺だけじゃなかったらしい。


弓が尻尾を振る若の世界に意識を飛ばしている間に、康祐は朔真に寄りかかってコーヒーを飲む夏流へと視線を向けた。



「この髪、色変えたらいいのか?」



奴の茶色がかった瞳は懇願するように細められる。



その瞳にゆっくりと視線を合わせた夏流は、小さくため息を吐いた。



「・・・そうね。そうしたら少しはマシかもね?」



思ったよりしっかりとした自分をもつ康祐に、夏流も目くじらをたてて怒ることではないと少し冷静になったらしい。


それでも・・・・、どうしても髪色は嫌らしい。



夏流の返答に小さく頷いた康祐を一瞥すると、夏流はその声音に優しさを滲ませて、自身が身を預ける朔真へとその艶やかな視線を向けた。


「朔真、おかわりは?」


「ん?いらね。お前は?」


「んー・・・やめとくわ。」



ライオンの優しい声に夏流はニッコリと微笑んで食器をトレイに乗せる。



「さて・・・、弓。」


「あいよ。」


「放課後、ここに来るわね?」


「へーい。」



いつも帰れる日は弓と一緒に帰っている夏流は、ため息を吐き出して手を振る弓に背中を見せると、教室へと歩を進める。


どうやら康祐も一緒なのが嫌らしい。



「失礼します。」


「ん、じゃーねヒヨコ。」



弓さんに呼び名をヒヨコにされた康祐は、苦笑いと共に夏流たちの後ろを歩く俺の隣へ並ぶ。



「あれ、天然。気いつけろ。」


「・・・ああ。」



俺の忠告に素直に頷いた康祐と苦笑いを合わせると、たわいない会話をしながら教室を目指した。

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