第26話
「もしかして・・・新城弓さんですか?」
赤野郎は夏流の剣幕に若干引いている弓へと首を傾げる。
「ま、まぁ・・・・」
新城姓になって、何故か弓は未だに照れを見せる。
少し顔の赤い弓の返答を聞くなり、赤野郎は素早く立ち上がって勢い良く頭を下げた。
「はふっ、」
それに面食らう弓はいつもの奇声を発する。
「安城月組長男、安城月康祐です。
今日から若の元で学ぶこととなりました。宜しくお願いします。」
いつもの無愛想とは程遠く真剣な表情で頭を下げた康祐に、俺たちも面食らう。
そういえば流石にオヤジの仕事は見れないが下っ端扱いで若の事務所で働くと聞いたような聞かないような。
しっかりとした康祐の挨拶に、若干引いていた弓の大きな猫目がゆるりと斜め上を向いた。
「そーいやー朝、秋が"ヒヨコ"が働きに来るって言ってたなぁ。
だから迎えに行くっつってた。」
「若自らが?」
俺の問いかけに弓は小さく首を横に振った。
「ちがくて。いつもの無理くりなこじつけで私を迎えに来るつもりなんだと思ってたからさ。
無視して出てきたんだけど・・・・」
相変わらずの若へのドSぶりを発揮した弓は細めた猫目を康祐へと滑らせた。
「・・・・"ヒヨコ"どころか、トサカが真っ赤な"ニワトリ"じゃね?」
康祐の派手な様相に口端を引くつかせた弓は、相変わらず派手な不良は苦手らしく、康祐と目が合うとあからさまに逸らして彼方へと視線を滑らせた。
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