第25話

休み時間の度に康祐は夏流の席の前まで来る。



運の悪いことに珍しく今日は真面目に授業に出ている日なのに、だ。



大きな体躯で机の前にしゃがむと、奴はなにをするでもなく、卓上で組まれた両手に顎を乗せて夏流を観察。



夏流は後ろの朔真に体ごと向いているから、変な図が成立していた。



横で眺める分は中々面白いから、俺は黙って放置する。



そして・・・



「誰この赤いの。」


「チッ、弓姉さん?秋兄に頼んでくれないかしら。こいつを消してって。

弓姉さんが潤目で頼めばイチコロでしょう?」


「う゛、あんたの今の潤目のが殺人的だから!」



相変わらずアホな会話をしているのは、猫女弓と夏流。



昼はいつも、卵にはいかない。


最近はもっぱら購買で休憩するからだった。



長引いたが冬休み前から弓は仕事に復帰。


左手は若干不自由ながらも、なんとか仕事をできるまでに回復をみせていた。



そして最近増えた、購買の個室。



弓も一緒に休憩出来るように若がポケットマネーを出した。



そんな俺たちの専用スペースにも無言でついてきた赤い奴。



「・・・若い頃の蓮さんに、似てね?」


弓の発言に夏流が顔を歪める。


「チッ、全然似てないわ。゛お父さん゛の方が素敵よ?」



大きな体躯、髪色・・容姿は康祐の方が甘い、が、



「ああ、憧れてる。」



康祐の発言に夏流の瞳が鋭く細められる。



夏流は、オヤジを゛父さん゛

蓮さんを゛お父さん゛と呼ぶ。



こいつの中の蓮さんの位置づけはかなり特別だ


さすがに朔真程じゃねえが、両親と同じく大切にする存在。



(そんな蓮さんを意識した見た目が気に障ったからか・・・)



思わず苦笑いが漏れた。



夏流が初対面の相手に嫌悪を全面に出すのは珍しい。



どうやらその答えがここにあった様だ。

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