新城の婿

第23話

漸く木下も俺を諦め、平穏が訪れた。



かに思った。



しかし、若と弓の婚姻の儀が終わり、俺たちが3年に上がる4月。



波乱を呼ぶ男が転校してくる。




「安城月 康祐(あきつきこうすけ)だ。」



180は軽くある大きな体躯。


赤い髪をオールバックに流し、表情は鋭い。


しかし顔は恐ろしく整っており、ガタイからは想像もつかない、繊細な造りをしていた。



奴の目は、まっすぐに、俺の女に。



夏流はというと・・・



「・・・・不快だわ。その眼、此方に向けないでくれるかしら。」



嫌悪感いっぱいに眉間に皺を寄せていた。



そんなことに安心してしまう自分の器の小ささを痛感しつつも、この男をそう無げにもできないのは事実だ。



奴は同盟の組の息子で、今回組同士で交わされた"頼み事"の中心人物だから。



こんな容姿をしておいて、こいつは組を継ぐつもりがないらしい。



後継者もいない安城月組の組長は頭を抱えた。



そんな中、この林道に3年から通い新城の"頂点"を見て今後の人生を決めたいと言い放ったのがこの未だに夏流へ熱視線を送る康祐本人だ。



(明らかにこれは……、)



夏流目当てだろう。



俺の眉間に皺が寄る。



しかし、この男、優秀そうなのは確かだった。



「なんなら白虎いれてもいいな。」



そう呟いた密人。



俺もそれには同意だった。



この男を形成する雰囲気、その出で立ち、表情や仕草。



恐らく喧嘩をしても強いだろう。



夏に惚れてる事を除けば魅力的な男だった。



「はいはーい!彼女いますか!」



安城月の容姿に早々に食いついた女たちが頬を染める中、その内の1人が声を挙げる。



「・・・いねえ。」



どうやら無愛想らしきこいつは不愉快そうにそう吐き捨てた。



「・・・だが、」




ところどころで女たちの歓声が上がるが、それを遮る様に奴の声が続く。



「手に入れたい女ならいる。」



ニヤリと口角を上げた安城月は、艶を含んだ視線を夏流へと向けた。



「・・・吐いて、いいかしら?」



不快そうに眉間に皺を寄せた夏流は


「イケないものを見たわ。」


と何故か卑猥に聞こえる発言をして身体ごと俺へと向き直った。

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