第22話

それは一瞬の事で。


我に返ったおっさんは戸惑いながらも口を開いた。



「ま、まぁ、別にいいが・・・」


「よかったです。では、」



朔真の甘い笑顔に騙されたおっさんのバックアップもあり、朔真の口から淡々と席順が発表される。



先頭が夏流、背後が朔真、その後ろが伸吾。


夏流の隣が俺。


で、朔真の隣は白虎のメンバーで固められた。



そしておっさんに背を向け、木下へ口を開いた朔真。


その声は担任に聞こえない程度で紡がれるが、俺にははっきりと"見えた"



『今後、近付いたら……、お前を排除する。』




見開かれた濡れた瞳。


青い唇。



彼女は朔真の殺気に自身の"終焉"を想像する。



女が震える吐息を吐き出しながら小さく頷いたのを確認すると、朔真は満足そうに主人の元へと踵を返す。



「夏流、卵行く前に購買行こうぜ?」


「ん。」



自然と差し伸べられた手に乗せられた小さな手。



そんな光景に慣れたのは、いつからだったか。



俺の"親友"が手に入れた、唯一無二。



ムカツクが、羨ましい限りだ。



教室を出る2人を追いながら未だに青い顔の木下を見て、ゆるりと、口角が上がった。

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