第21話

side 密人




チャイムと共に、教室中の人間の動きが一瞬止まる。


それにすかさず動き出したのは、黄金色のライオン。



「先生。」



彼のテノールの声は、一瞬静まった教室によく響いた。



ゆるりと立ち上がった彼は、いつの間にか夏流と卓上で繋いでいた手を名残惜しそうに解く。


苦笑いが漏れた俺と、奴と同じく名残惜しそうに手を解いた夏流を置いて、朔真はゆっくりとおっさんへ向けて歩を進める。



怠そうなのに、男である俺でも感じる色気。



朔真が歩く度、女たちは頬を染める。



「・・・・・チッ、」


「ククッ、夏流ちゃん、はしたねえぞ。」



それが面白くないらしい夏流の鋭い視線は、女たちを今にも殺してしまいそうだった。



女を寄せ付けない俺の唯一傍にいる女。



こいつがこんなんだから俺は女に疎いんだ。



・・・・全く、"女子力"ってもんがねえ。



ため息を吐き出した所で、


「密人?何を考えたのかしら。」


「ッッ、別に?」


どうやら読まれていた、俺の思考。



とぼけた俺はおっさんの前に到達した朔真へと視線を滑らせた。




「な、なんだ高梨。」



助かったとため息を吐き出したおっさんに、朔真はめったに見せる事の無い甘い笑顔を向けた。



「木下はもういいです。」


「へ?は、そう、か。」



「・・・・チッ、」


「夏流、作戦だ。」



朔真の貴重な甘い笑顔に、頬を染めるおっさん、絶句の木下、卒倒しそうな女たちに、夏流が殺気を振りまく。



「その代わり、俺たちが席変わってもいいですか?」


「は、」


おっさんが間抜けに口を開き、木下は目を見開く。

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