第19話
「ヤった男、金髪のロン毛だったらしい。
お前とは似ても似つかねえきったねえ髪色だったらしいけどな。」
吐き捨てた俺の言葉に皆息を呑む。
「若が大半引きちぎったらしいけど。」
鼻を鳴らした俺に顔を顰めた皆は、思い思いにその背中に暗い影を落とした。
「チッ、」
険しく表情を歪めた密人はおもむろに立ち上がると、無言で幹部部屋を後にし・・・、
帰ってきたこいつは、銀色の髪を靡かせていた。
こうみえて親父に憧れてるこいつが思いついたのは、この髪色だけだったらしい。
「ククッ、似合うんじゃね?」
そう言った俺に恥ずかしそうに前髪をかきあげる密人は眉間に皺を寄せてタバコを吸ってたっけ。
風に揺れる密人の銀色の髪は、太陽の日を浴びてゆらゆらと光を運ぶ。
その光に目を細めていると、漸く笑い終わった夏流が涙で潤むその瞳を密人へと向けた。
そんな事だけで嫉妬してしまう自分に呆れる。
母さんに捨てられてから、
いや、物心ついた頃からか、
俺は、自分だけをただひたすら想ってくれる存在を求めていた。
容姿に惹きつけられてくるやつはいた。
だけど誰も、"俺"を見てはくれなかった。
木下はそんな俺に今みたいに話しかけてはくれたけど、ただ、それだけだった。
なにより俺の【心】が、この女を求めなかったんだ。
夏流との出会いは衝撃的だったけど、それ以上に俺の【心】が共鳴した。
だから俺が今担任と揉めているこのガキみたいな女を選ぶ筈がないんだ。
女たちを軽く一瞥すると、俺の興味は既に夏へと向かう。
「フフ、浮気ですって!」
「お前・・・なんで嬉しそうなんだよ。」
俺の目の前で阿呆な会話を繰り広げる2人は、俺より長い付き合いで。
生まれた時から"親友"同士だった。
これだけ一緒にいて仲がいいのに恋愛対象にならないのは、とても不思議なことだ。
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