第14話

「煩いわね。」



彼の悲鳴に、両耳を両手で塞いだ私の腕を引き剥がそうと、伸吾はしっかりと掴む。



「ちょちょちょ、教えてよ!」



焦る彼が私を揺り動かしたその瞬間・・・。



シュッ・・・・「!!!」



風が起こり、伸吾の体は宙を舞う。



ザワッ・・・



ざわつく教室を余所に、この空間だけ冷たい空気が流れた。



床に尻餅をつく伸吾は、その青い顔を自分を体術で倒した人物へとまっすぐに向ける。


同時に地を這うような唸り声は、教室全体を氷河期に誘った。



「てめぇ、夏流に触れるな。

・・・・・・・・殺すぞ。」



そんな物騒なセリフに顔色を更に悪くした彼は、私へとその潤んだ目を向ける。



それが今朔真の隣の席で震えている彼女より可愛いと思うのは私だけかしら?



「フフ、抗ってみたら、どうかしら?」



こんなに可愛い顔の伸吾も、白虎の第二隊長を務めているんだもの。


この世界ではかなり強い部類に入る。



「いやいや!なっちゃんの旦那密人より強いじゃん!僕じゃ無理だよ!」



懇願する伸吾が可愛いからしょうがなしに口を開いた。



「朔真、やめなさい。」


「チッ、」



舌打ちを吐き捨てた朔真は伸吾をその黄金色の眼を細めて一瞥すると、

"覚えたからな"

とでもいうかのように軽く睨んで席へと戻る。



そして不貞腐れるように卓上で寝る体制に入った彼の右手は、しっかりと私の髪を握っていた。



しかし鋭い眼光はそのままに伸吾を低く見据えたままで、青い顔の伸吾に同情の視線を向けておく。



「で?誰だよ?」



それを静観していた密人は、思ったより壮士の彼女がかなり気になる様子。

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