第11話

「はぁ、はぁ、置いていくなんて酷ーい。」



(そのブリブリの演技酷ーい。)



直接言うとキレられそうだから心の中でツッこんでみた。



彼女は自然にその細い腕を朔真の腕へと絡め・・・


「チッ、触るなっ。」



ようとして逃げられてしまう。




"ボディータッチは男を落とすテク。"



昭和だろうが、平成だろうが、まさに鉄板の"交渉術"よねぇ。



ウンウンと頷いて、潤目に上目遣いで朔真を見上げる彼女と、険しい表情で彼女を見下げる朔真を置いて先に進む。




「あ、オイっ!」



焦りを見せた朔真は慌てて私の手に指を絡ませた。



そんな朔真を鋭い視線で見上げた。



「言ったわよね?"私のエリア"に、これ以上踏み込めば・・・、」



私が、動くって?



「ッッ、」



新城の力なんて使わなくても、私は彼女を排除してみせる。



・・・疲れそうだけど。



この平穏な世界を乱されるよりはマシだわ。



目を細めた私に、朔真の口端が引くつく。



「大丈夫。私の弟よりは簡単じゃない?」



可愛い私の弟。



彼はよく、大事な人間に行き過ぎた悪態をつく。



そんな彼に教育を施すのは、私の仕事。



拳一発で済ます父さんは母さんに夢中だし、同じく拳の秋兄も最早弓に夢中。



春兄は完全無視だし?



最近は弓のお陰で大人しくなっちゃって、面白くなかったのよ。



「冬夜用に考えてたネタ、まだまだ沢山あるのよ?」


「・・・・・・、」



朔真の黄金色の眼を眩しそうに見上げた私に、朔真の顔が恐怖に染まる。



「ッッ、つ、着いたぞ。」



ガラッ・・・・、



誤魔化すように開かれた教室の扉を潜り、開けてくれた朔真にお礼を言って室内へと足を踏み入れた。

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