第8話

アワアワしてて可哀想だから教えてあげる事にした。




「明け方壮士が持ってきたわよ。朔真が寝てから、ね。

残念そうに舌打ちしてたけど・・・。」



「・・・・あぶねぇ~、」



頭を抱えて安堵のため息をついた朔真の指をギュッと握る。



見上げた彼の金色の目は、まるで子猫の様で。



時計を見ると、時間が無い・・・。



チッ・・・



「お風呂では、無理ね。」



呟いてシャワーを浴びに彼の手を引いた。




ーーーーーーー。





「ごめんね、佐武。少し遅れたわ。」


「いえ、急ぎますか?」


「ううん、いいわ。安全運転、でね?」


「はい。」



迎えの車に乗り込み、学校を目指す。



「佐武さん、すいません。」


「ククッ、お前も大変だな?」



すまなそうに隣で頭を下げる朔真に、佐武が聞き捨てならないセリフを吐いたのに、小さく首を傾げた。



「・・・・佐武?それはどういう意味かしら。」


「・・・・いえ、別に。」



戸惑う佐武に、朔真は苦笑を漏らす。



「お前な、グランで朝帰りするのなんてお前くらいだぞ。」



ため息混じりのセリフに、私の眉間に皺が寄った。



「あら、本家の方が良かった?"お仕置き"」


「ッッ、・・・いや。」


「クックックッ‥‥朔真、お前の負けだよ。」



ニッコリと微笑んだ私に朔真が赤面で返し、佐武はいつまでも面白そうに笑う。



いつもの光景に、私の波打っていた感情も段々と静かになっていった。


なのに・・・・、



「お嬢‥‥。」


「・・・ん、そうね。」



林道の校門を潜り、いつも車を停める場所。



そこに佇む、ツインテール。



「朔真、彼女が待ってるわよ?」


「ッッ、夏、やめろ。」



真っ黒に染まるは、私の心。



佐武が運転席を降り、私側の扉を開けた時、朔真も反対側を自分で開ける。



「朔真くんっ。はよー!」



耳障りな声が聞こえ、私は佐武が下げている頭を険しい表情で見つめた。

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