第65話

自分がどんなに憎まれていても、誰かの記憶に残っていたい。


そんな願望を宿した目。




例え憎悪でも、いろははこの世に自分を残していたいんだ。


僕にはそれが嫌で仕方ない。



僕がいる。


僕という人間の中では、いろはという存在は色濃く残る。


記憶に、身体に。


これからもっと、いろはを刻みつけるつもりだ。



なのにいろはは、なぜ他にそれを求めるんだろう?



恨んで欲しいなら、恨んでやるのに。愛することは、止められないけど、愛と憎悪は同じだというだろ?



中学校でもいろはは、明らかに僕目当ての女と”友達”をしていた。


その女は僕を手に入れようと色々なことをしていたけど、いろはは自分が傷ついていても、決して何かしようとはしなかった。



纏わり付かれる僕を見て、傷つくくせに。


寂しい思いをするくせに。


それでもいろはは、”友達”を捨てきれない。



余りに滑稽で、馬鹿馬鹿しい”クセ”だ。




きっと傷つく以上に、誰にも見られない自分が嫌なんだと思う。



「まぁ、別にいいけどね。」


「・・・気に入った?」



僕の吐いた言葉を誤解したらしいいろはは、眉を下げて涙を浮かべる。

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