第63話
それは、いろはのトラウマと関係している。
いろははいつも、”その他大勢”だった。
いろはという個を愛しているのは、僕だけ。
だからこそ、いろはは僕がいろはの前で他人行儀に仮面をかぶるのを極端に嫌がるし、恐れもするんだ。
僕という存在を失ったら、自分はまた、”その他大勢”になってしまう。
そんなちっぽけな自分という存在は、その他に分類されたまま、埋もれて無くなっていく。
いろはは、自分という存在を特別に見て欲しいという願望が他の人間より極端に強いんだと思う。
だけどそれが、僕には魅力的に映った。
いや、必要不可欠な能力だ。
僕は誰かに、必要とされたい。
僕という存在全てを賭けて、愛しぬける人間が欲しかった。
そんな僕が、出逢ったいろはという存在は、代わりなんていない。
小さな頃……あの日。
いろはが”そんな人間”だと確信した僕は、いろはのその願望を、更に煽った。
僕という存在がそうなのだと刷り込み、依存させ、そして縛ったんだ。
「いろはは、特別だよ。」
この言葉は、本心だ。だからか本物の笑顔でそう言えば、いろははハッと気が付いたように目を見開いた。
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