第56話
泣いて泣いて、泣き続けて。
スマホの着信で気が付いた。
バイブにしているそれは、副キャプテンの絵理(えり)からの着信。
チャット式のそれを開けば、
[どこにいるの?]
いつまでも教室に来ない私を心配している内容だった。
それをただ見つめ、ゆっくりと立ち上がる。
壁に取り付けられた鏡を見れば、メイクが崩れてぐちゃぐちゃな自分の顔が写し出された。
「ハッ、」
小さく息を吐いて、整える。
なんだかメイクをする気も起こらなくて。自嘲の笑みが漏れた。
タオルで乱暴に涙を拭きながら、よろよろと歩き出す。
どうしても、どうしても、信じられなくて。
ちゃんと見たのに。
教室に行けばいつものように蓮池君が口角を上げて待っているような気がして。
ひたすらに、教室を目指した。
廊下で話している生徒、彼女を教室まで送る彼氏。
朝の風景はいつもと変わらない。
ただ、少しだけ、少しだけ、皆ざわざわと何かを囁き合っていた。
廊下を歩く私は、よっぽど酷い顔をしているのか。
何人もの生徒が、ちらちらと視線を寄越してくる。
それを気にする余裕は無い。
漸く教室に着いた私は、一瞬立ち止まって。
深呼吸して、室内に足を踏み入れた。
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